2022年4月7日 
株式会社とめ研究所 

とめ研究所若手研究者懸賞論文
受賞者決定のお知らせ

 2021年度とめ研究所若手研究者懸賞論文の表彰を、4月7日の当社創業記念日に行いました。受賞者について以下のとおりお知らせします。
 ご応募頂いた皆様の、研究者としての今後の更なるご成長、ご活躍に期待します。

最優秀賞(1編)

SD法による大規模印象評価に基づくアノテーションを支援する可視化
 お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 理学専攻
 飯島 緋理 氏
 
 受賞コメント  
「近年、情報可視化の分野では人工知能における学習データの分布や学習過程・結果の理解を目指す研究が活発に行われています。そのホットな分野で、「アノテーション支援」と的を絞って取り組んだ本研究を、高く評価していただき大変光栄でございます。今後とも学びの姿勢を崩すことなく精進してまいります。この場をお借りして、ご指導くださいました伊藤貴之教授、ユーザーテストに参加してくださった皆様に感謝申し上げます。」

優秀賞(2編)

補完的物語生成手法に基づき拡張したあらすじ文を用いた映画の興行的成功予測
 大阪府立大学大学院 工学研究科 電気・情報系専攻
 飯倉 陸 氏
 
 受賞コメント  
「この度は、2021年度の優秀賞に選出していただき、誠にありがとうございます。本論文の査読および選考をしてくださった皆様に心より感謝申し上げます。私は人工知能技術の実世界応用に興味があり、大学院では主に機械学習と自然言語処理の研究に従事しました。本論文では、メタ情報とあらすじ文を利用した、マルチモーダルな映画の興行的成功の予測手法を提案しました。今回の受賞を励みに、今後より一層精進していく所存です。」

人工ニューラルネットワークに基づく銀カルコゲナイドの原子間ポテンシャルの構築と熱伝導度計算への応用
 熊本大学大学院 自然科学教育部 理学専攻
 竹下 雄輔 氏
 
 受賞コメント  
「この度私の論文を優秀賞に選出して頂いたことを非常に光栄に思います。査読された方々を含め、とめ研究所の方々に御礼申し上げます。またこの場を借りて、私の研究にご助力下さいました、研究室の先生方、先輩、同輩等にも御礼申し上げます。「とめ研究所若手研究者懸賞論文」がより周知され、今後も機械学習等の研究分野の発展につながることを強く願っています。」

審査

・審査委員長
 奈良先端科学技術大学院大学 名誉教授      木戸出正繼

・審査委員
 株式会社とめ研究所     代表取締役     福留 五郎
 株式会社とめ研究所     取締役 第二開発部長 坂本  仁

・最終審査の講評 審査委員長 木戸出 正繼

 大学院博士課程の若き学生を対象に「とめ研究所若手研究者懸賞論文」を募集しました。本懸賞論文は、とめ研究所の経営理念に基づき、次世代を担う若い研究者・技術者(の卵)を支援し、面白く、ワクワク感のある新しい研究開発活動の活性化を目指すものです。

 2000年代初頭に3度目のブームに入った人工知能技術開発の拡がりは、基盤情報処理技術の高度化とコンピュータの多様化・高性能化と共に身近な応用場面が登場し、ビジネス展開も拡大しています。また新たな社会環境への対応としてSDGsが設定され、人工知能技術の活用の場として期待されています。

 このような社会環境変化に対応し、今後の研究開発そして社会イノベーションを担う若手研究者・技術者を発掘・育成していくべく、応募論文の審査を行いました。本懸賞論文が、若手研究者・技術者の経済的なモチベーション面の支援になることを期待します。

 最終審査では、テーマ性、論理展開性の観点での一次審査結果を参考に、研究・技術の独創性(新規性)とその説明・表現のわかり易さ、実社会への適応性(信頼性や有効性)と現代社会ニーズの観点から評価を行い、1件の最優秀賞と2件の優秀賞を決定しました。

 最優秀賞は「SD 法による大規模印象評価に基づくアノテーションを支援する可視化」(飯島 緋理 氏)です。

 昨今、PCソフトウェア環境の整備により幅広く人工知能システムが実装され、ユーザ独特のデータ解析が可能になる中で、ユーザが取り組む技術課題は、如何に目的の学習データを効率よく精度よく集めるかにあります。その一つが学習データに正解タグを付加していくアノテーション作業です。

 飯島さんは、女性着衣服の画像群からファッション性の印象評価を得る応用に取り組んでいます。多人数の印象回答値を参照して、その印象のタグ付けを自動化する過程を可視化し、その結果や分析に基づき,人の手によるアノテーション作業の再策定を可能とする独自の可視化システムを構築し、印象評価実験を行い、その効果を確認しています。

 優秀賞は「補完的物語生成手法に基づき拡張したあらすじ文を用いた映画の興行的成功予測」(飯倉 陸 氏)と「人工ニューラルネットワークに基づく銀カルコゲナイドの原子間ポテンシャルの構築と熱伝導度計算への応用」(竹下 雄輔 氏)です。

 2件ともシミュレーション実験の効率化のために、人工知能技術の考えを上手に取り入れています。実社会では全く異なる方向の応用で、飯倉さんは異色のエンタメ業界への応用、竹下さんのアプローチは複合材料の最適な組み合わせの応用です。

 飯倉さんの応用は、映画の興行予測に取り組み、企画段階で興行の成否を予測したく、従来の映画監督や出演者・公開年などの特徴量情報に、人工知能技術で映画シナリオの流れを表現するあらすじ文の言語情報を付加し、興行予測をより精度よく求めるもので、興味深い試みです。

 竹下さんの応用は、新薬や複合材料の選択における材料組み合わせの性能予測の効率化に、人工知能技術を利用した試みです。具体的には、個々の熱電材料の温度特性とそれらの組成割合の最適解をシミュレーションで求めていく実験で、興味のもてる結果を得ています。

 これら2件はいずれも人工知能技術の新たな応用開拓に必要な関連データ活用アイデアを実装し実験評価し、実用展開の可能性を示しています。できれば、これらの研究で工夫した幾つかの工夫・アイデアを一般化し、その他のインパクトのある社会ニーズへの対応例を示して欲しいところです。

 最後に、3名の受賞者を含む全ての応募者の皆さんに、これからも積極的に社会の変化に対応する逞しい研究者・技術者に成長し、学界・業界をリードしていく人材に成長していかれることを期待しています。

以 上 

とめ研究所若手研究者懸賞論文